今回の本は、選挙制度への数学的アプローチを示した本です。 分厚い本なので、少々読むのが大変かもしれませんが、 とりあえず読むには解の章から読めばわかると 思います。そのばあいはわからない言葉がでてくる と思いますが、後ろに単語の説明がついています のでそれを読みながらであれば、十分理解できます。

ただ、アメリカの歴史好きのひとには、前から読むことを お薦めします。アメリカのある意味裏面史を知ることができます。 こうも簡単に選挙結果を左右できたのかとおどろかれると思います。

さて、その結果いろいろな投票制度が検討されては消えていくことに なることになるのですが。最終的に残ったのが。千年続いたベネチア 共和国のものと、数万年以上の進化のの中ではちが会得した方法で あったのがなかなか面白い結果でした。 科学は常に実証主義であって、実験して確認して初めて認められる わけですが、長居間歴史の中で実践して問題がなかった ものこそが最適解であったという今回の論証は、 まさにその方法の正しさを示したように思います。。

残念ながらベネチア共和国はナポレオンに滅ぼされてしまいました が、もし生き残っていたらもう少しましな投票制度が世界にひろまった のではないでしょうか。

投票制度の難しさは、たった一票でも多い方が完全に勝利するということに あります。４対６であったら、その割合でケーキをわけましょうというのであれば、 投票内容と結果にあまり差はないのですが、投票では６の方だけが全てのケーキを 食べる権利を得ることができるわけですので、ちょっとした投票行動の違いが 大きな結果の違いを生み出します。こういう関数は、カオス的な状況 を生み出しやすいものですので、数学的な解析は難しくなりますし、 我々の皮膚間隔とかけはなれた結果をだすことになります。 （具体的にどのようなものがあるかは、この本のいたるところに多様な例が 載っています。）

ただ、よく考えるとそのようなカオス的な状況になるのはまれなときであることが わかります。つまりある程度僅差のときだけおこります。 僅差であれば、相手と似た第三候補をたてて相手の票を 割ることができますが、大差ではそれも無理です。 （ムーア氏は華氏９１１の中で、実際にはゴア氏こそ勝利している と残念がっていましたが、あれほど接線となったら、 現在の投票制度では、とてつもなく不安定になりますから、 どちらにとっても五分五分というところが実際のところです。 より選挙結果が安定する、より多くの支持者を得られなかったということで、 両者があの場合は敗者であったと考えるべきです。 [最高裁判決は敗者復活をきめたようなものです。] ですから、より大差が付くように選挙活動をすべきなのですが、 そのような、ランダム性を少なくしたい場合には、 この本が推薦しているような選挙制度に変更すべきです。 巻末をみると、オバマ氏もマケイン氏も選挙制度を変更することには賛成のようです。 互いに党首なのですから、まず、党大会のレベルから導入してほしいものです。 そうなると、いちいち選挙戦略を練らずにすむので、 信頼するひとだけを評価し選ぶことに集中できます。そうなれば より、よい社会が産まれることでしょう、）

ですから、よい投票制度というのは、 どれだけ、そのような状況を引き起こす確率を減らすかと いうことになるわけです。 そういう意味で、この本で紹介されているような、 選挙制度の比較方法というのは、大変わかりやすく 優れた方法だと思います。

米国では上に示したように、実際の政治活動へ取り入れようとする 活動が既に始まっています。ところが、日本では、このような活動は聞きません。 [あるとすれば小選挙区制度にしてランダム性を政治によりとりいれようという不思議な動きです。] 民主主義を獲得した国と真似た国の差がでてしまっています。 制度というのは常によりよくするようにしないと崩壊してしまいます。 日本ももっと投票制度について検討するべきです。 国会の投票行動も賛成と反対だけでないこの本のやりかたでやるようにしたら、 多様な案を一度に票決できて、より最適な解に短時間で近づくことでしょう。 また、昔田中派は、議会の過半数を満たす自民党の過半数を制することで、 全体から見れば小さいのに日本の政治決定を全て支配下にすることができました。しかし、そのようなことも この本の方法では難しくなります。みなさんの町内会や役員会などの投票制度も変えることを 検討してみたらいかがでしょうか。

そして、グルジアで紛争がおきましたが、このような独立したい地域の扮装解決についても、 本投票方法は利用できるように思われます。現在のままでは、ヒットラーの時代と変わらず 軍事力で解決するしかなくなってしまいます。それでは、いつまでたっても戦争がなくなりません。 普通はそのような地域においては、ユーゴスラビアなどがわかりやすいですが、 最初は仲良く暮らしていた人達に、民族主義を訴える人達があらわれます。 そして、隣人同士が血みどろの戦いをすることになり、各民族間に急速に反発力が生まれて 勝手に国境がひかれます。 しかし、ほんの数年前には、仲良くしていたわけです。当然大部分の人にとってはどっちでも いいわけです。そういう選択肢を投票行動に含めることは重要です。 そういう勢力が多いいことがわかれば、両者ともに冷静に判断できることでしょう。 ですから、そういう地域では、軍隊の利用を禁止して非武装地帯を宣言します。 さらに、数年ごとにそのような国の体性について住民が選挙することを義務づけます。 そして、その選挙で移りたいという意志が示されれば国からでることを認めます。 この本の選挙制度であれば、急激に支持率は変化しませんから、 たとえ、他国に移ることになっても、やはり逆の国にうつりたい という人々がいるでしょうから、投票は続きます。 その間に、本当にそれでよかったのか判断できますし、 逆に戻したい人達は、より元の国を魅力的にして戻そうとすればよいのです。そうなると、 国々が魅力を高めるように行動するので、その地域がより活性化することでしょう。

なるべく民族ごとにまとまるべきだという方もいらっしゃるでしょうが、 民族の定義が非常に難しくて、えてして排他的な定義になります。 それは、数学的にやはりカオス的な状況を生み出します。 民族内での閉じた婚姻だけということはありえませんから、 当然血筋的にも風習的にも濃淡があります、それをある閾値で２つに分けるのですから、 選挙制度と同じようにカオス的状況をつくりだします。 選挙制度と違いこの場合は矛盾するいくつかの考えが並列する ことになり、戦争状態を引き起こしてしまいがちです。

理想の国家は米国のように各民族が平等に自由に風習を守って生活ができる国家です。 米国の州になりたいという国はいくつもありますが、出たいという地域はありません。 それは、米国も問題もありますが、より国としての魅力があるからです。 EUもそういう国を目指しているようです。ロシアもそういう魅力のある国家体制を 目指して、EUとロシアの境界では、選挙によって地域の所属が年によって変わるという状況 を創るべきでしょう。 この状況の実現こそが、本当に戦争のない世界を獲得することになると思います。 （そのためには地域の人達が自分の意志で生活できるように、 まずロシアはもう一度知事の公選制を復活すべきでしょう。）

では、また来月に。



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