今回、紹介する本は、ソ連の共産党のできたころの内幕をかいた本です。正直いってよみにくい本なのですが、組織が変容していくありさまがよくわかる本でしたので、あえて取り上げました。ソ連ができて、スターリンが実権を握ったころ、粛清の嵐がふきます。いったいどうしてそうなったのかを、米国の学者がソ連の機密文書を調べてみつけようとした本です。
共産主義というのは、ある意味素朴な主張です。しかし、そのような素朴な思想に共鳴した人々の組織がやがて粛清のような恐ろしいことをやる組織にかわっていきます。ただ、本人たちは正しいことを行なっていると考えているので、きちんと文書が残っていてそれなりに経緯を知ることができるのです。それらの文書をみると、自ら率先してという感じではなく、その時々の内部からの声と敵に対するおびえに対処しているうちに、疑心暗鬼がつのってきてますます厳しいものになったように思われました。とにかく、地区ごとに粛清する目標人数をあげているのにはおどろきました。共産主義に不必要な人間がまっさきに排除される恐ろしい社会になり、あるところで人々が平常心を取り戻すと今度は弾圧していた人達が粛清されます。ことなる考え方を許容しない政策がいかにぶれて恐ろしい結果となるかがわかります。
ただ、このようなことは歴史上はめずらしいことではありません。陳さんが小説十八史略で述べていますが、中国の王朝の創始者で、帝位について身内を粛正しなかった人の方が珍しいのです。どうしてもことが成ったあと疑心暗鬼になってしまいます。今大河ドラマにでてくる頼朝も平家を滅亡させたあと義経を含む兄弟縁者を排斥して結局源氏が滅ぶもとをつくってしまいます。極端な手段でないと政権が変わらない政治体制であると、競争相手も極端な手段をとるのではないかと疑心暗鬼となり、さらに悲劇が生まれるわけです。
ですから、政権委譲が平和に行なわれる政治体制というのが必要で、それこそが民主主義なのです。そういうことを学ぶのにこの本は大切で、政権運営に携わる人には読んでほしい本です。(ただ、実際はそのような人は権力闘争などにいそがしくて、このような本を読んでない人がほとんどでしょう。政治の分野のMBAみたいな資格をとれる学校があって、こういう本を読んでそのとき政権にいたらどのようにしてこの悲劇を避けたかなどをシミュレーション体験した人が政権運営を担当するような世の中になると大分悲惨なことがへるはずなのですが。)
ちなみに私は、共産主義の最大の失敗は、独裁というものを認めてしまったことにあると考えています。初期の弾圧や反感がすごかったため、つい独裁で共産化をという流れになってしまいました。そのためにそれまでの組織運営の工夫がすべて捨て去られて、独裁者のような組織運営の専門家に独裁の口実と機会を与えてしまうことになります。そして、ことなる考え方を排除することにより怨みをかっていきます。(始皇帝やナチスなみに焚書までやっているのにはおどろきました。)本来、共産主義とは経済政策のひとつで、イデオロギーとは関係ないはずのものです。実際バブル前までに日本が行なった米政策や護送船団方式の経済運営などは社会主義そのものであり、自由主義国であっても政策として採り入れることは可能なのです。しかし、独裁によって目的を達しようといそいだことで多くの敵をつくり、国家運営の目的もずれてきて共産主義なのに不満をもった人の方が増えてきて政策が機能しなくなります。もし、ガンジーさんのような穏やかな主張のやりかたで共産主義を広めていたら、あのような長期の冷戦はおこらず、資本主義と共産主義のよいところをとりいれながら文明や文化がもっと発達していたのではないでしょうか。
では、また来月に。
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