今月の本 0409号 スパイはなんでも知っている 春名 幹男 (著)
今回は、スパイの話です。 以前どろぼうの自伝を紹介しましたが、今回のは 国家的な仕事をしているスパイの記録本です。
スパイというと007を思い浮かべますが、あんな事件がしょっちゅうあっ たら、そうとう記事をにぎわすことになると思っていましたので、実際には もっと地味な仕事ではないかと想像していました。
そこでこの本を読んでみたのですが、実際、そのような地味な仕事が大部分 のようです。ただ、この本には、そうではない報道されていることとちがう 記述もあり驚かされました。
ただ、残念なことは、それらの記録の多くが関係者の伝聞録にとどまってい ることです。ですから記述が正確かどうかは読み手には判断できません。そ こがこういう本の難しいところです。情報が漏れてはいけないようなことば かりですから、このような書き方が限度なのでしょう。
塩野 七生さんの海の都の物語りによれば、ベネチアの記録庫にはそのような 秘密工作の記録がすべて残っていて、それを読めば当時どのように施政者が 考えて行動したかが全てわかるそうです。 そのようになっていてこそ、時の施政者は正確な過去の履歴の上に正しい政 策を実行できます。ベネチアという国が千年以上もつづいた理由がよくわか ります。
しかし、現在ではどうなっているのでしょうか。そのような工作の記録は伝 聞でしか伝わらないからきわめて不正確な判断しかできないのではないかと 思います。最近の新聞に、大韓航空機撃墜事件の通信テープは日本が傍受し ていたのですが、それが政府のだれも知らぬ間に米国にわたされいて、驚い たという、時の官房長官の後藤田さんの記事が載っていました。おそらく、 そのような防諜施設ができるときには時の実力者のだれかの内諾をうけて米 国にもその施設の情報を流すということになったのでしょうが、文書が残ら ないので、引継がされずに政府当局者のだれもしらないということになった のでしょう。また、別の記事には大学認可基準がどういう根拠できめられた かが役所自身でわからずただその基準を守るようにいわれてしまうと嘆いて いる、新大学の申請者の談話もありました。これも、基準を決めたときはい ろいろ議論されたのでしょうが、それが文書に残されずに引き継がれないか らいつのまにか忘れさられてしまったのでしょう。
公開するかどうかは別にして、組織の時の判断と経過はきちんと残しておき 、一定期間ごとに見直さないと各組織がわけもわからずに行動して組織の体 をなさなくなります。
ぜひ、各国がそういう記録をきちんと残して、時の政策判断を行ってほしい ですし、できれば100年以上たったらそういう情報を公開して、このよう な本が正確に書かれるようになってほしいものです。そうなってこそ正確な 歴史もわかりますし、それをもとにした正確な施策の実行が可能になります 。そして、なるべくこのような手段をつかわないで、公正に国・企業・人が 自由に競争できる世界を目指してほしいものです。911のあと、公正さを 目指す動きが小さくなっていて不安です。別にCIAに情報をみられてもこ まらないのですが、その情報をもし本書に記述されているように他の人に流 されるようなシステムが実際にあるとすると、公正な企業活動は難しくなり ます。せめて、どの情報を収集してどの情報をだれが利用したかはその情報 の本来の持ち主が請求できるようなシステムにして、公正さと社会の安全の 両方を満たすようなシステムにしてほしいものです。
では、また来月に。
では、また来月に。
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