メールマガジン　今月の本　0309号未来宇宙技術講義—火星地球化計画から恒星間移動システムまで

今月の本 0309号未来宇宙技術講義—火星地球化計画から恒星間移動システムまで

未来宇宙技術講義—火星地球化計画から恒星間移動システムまで
スタンリー・シュミット, ロバート・ズブリン, 石原藤夫, 山本菊男

今回紹介するのは、ＳＦと技術書の中間のような本で、未来の宇宙技術の予測が述べられています。

科学技術が進んだと言われますが、ＳＦの世界からすると大分遅れているように思います。たとえば、２００１年宇宙の旅ででてきた技術と比較すると、反乱をおこすような人格を持ったコンピュータなどは、地球シミュレータのような大きなものを使っても、まだできていないようですし、月面基地も、重力のある生活ができる宇宙ステーションもまだ計画もないようです。

こういった新規技術の遅れの最大の問題は、経済的な側面を考慮していないことだと思われます。たとえば、新幹線の１０倍早い鉄道がつくれたとしても建設費が１０倍かかっては、それだけ高い運賃を負担できる人は少ないので、利用者が減って採算がとれなくなることでしょう。多くの研究はそのような費用についてはあまり考慮されていないので、結局計画の段階でとまってしまうわけです。ところが、ハンバーガーや百円ショップの価格からわかるように、物の価格は工夫すればいかようにも下げることが可能です。（このことは、日本マクドナルドの元社長の藤田さんの本を読むとよくわかります。）ですから、本来は新しい技術を行う時には、性能と同時に価格も研究のターゲットととして据えて、性能と価格の両方の改善を目指すべきなのです。たとえば、太陽電池などはもう性能向上よりも価格低下をはかる方がずっと重要で、もし、値段が１／１０になったら、ほとんどの人が太陽エネルギーで生活できるようになり、エネルギー問題や環境問題が一気に解決することでしょう。ですから、むしろ性能を上げた人よりも値段を下げた人こそ、ノーベル賞をあげてもいいくらい重要な貢献を社会に対してしたことになります。

残念ながら、そういった意味で経済的な側面まで考慮した未来の技術を予測する本は少ないのが現状です。

ところが、今回紹介する本では、宇宙技術について、経済的な側面でも論じられていて非常に感心しました。

宇宙開発は一見、金食い虫のようですが、ビジネスプランの作成のしようの仕方では十分、商売になる分野であることが示されていて、宇宙技術への期待が膨らみます。

同時に、各開発段階の移動方法の詳しいデータや仕組みがわかりやすく述べられているので、近未来ＳＦを書こうとしている人には、とてもよい資料になるでしょう。どの程度のことがどんな技術で実現できるかを実感できるので、ＳＦを読むときに、そこで使われている技術の実現性を検証しながら読むのもおもしろいと思います。（たとえば、谷甲州さんの航空宇宙軍史シリーズを読むときなどにぴったりでしょう。）もちろん読むだけでもおもしろい本です。

私は個人的には、宇宙開発は経済性云々の前に、隕石の衝突により絶滅した恐竜の二の舞をさけるために早急に人類は小惑星帯くらいまで進出して、小惑星から地球を守る技術を開発すべきだと考えています。現在は、そのような技術はほとんどない（せめて、観測体制くらいは完璧にしてほしいのですが、太陽方面からくるものは見えないらしいです。）ですから、突然大きな隕石が落下して人類が滅亡しても不思議ではありません。そしてそのようなことは、まだ始まってから数千年しかたたない人類文明の１００万倍も長い地球の歴史の上では、しょっちゅう起きているのですからよけい心配です。

そういう意味でこの本は、そのような技術を開発できて、地球を数万年ごとに襲う災害に人類が打ち勝って末永く人類が繁栄できる可能性を示すものとして、とても興味深く読みました。ぜひとも人類がそのような技術を手にして、数億年後も平和に暮らしていてほしいものです。

では、また来月に。

では、また来月に。

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