メールマガジン　2507号母系制の研究　（上）（講談社文庫）高群逸枝

　 2507号母系制の研究　（上）（講談社文庫）高群逸枝

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)

今月は久しぶりに普通の本です。

私はこれまでにも述べていましたが日本の古代というのは男女同権という印象がありました。皇室をみても昔は双方皇族というしばりがあったので、近親による経歴となりますから男系や女系ともに系図をつくることができるのです。皇室のいくつかの代では女系の方がしっくりきます。さらにあとから奈良時代につけられた中国風の諡号だとわからないのですが、和名だと天皇も皇后も同じ尊称なので男女同権だったのだろうと想像していたわけです。

まさにそういう私の印象を立証というか更に進んで古代は母系でしたよということを明確に示していたので今月はこの本を選びました。

一種の論文になっていますので、論文を読むのに慣れていない人は本論から読んでみてください。

特に印象的なのは高貴な母系に遭遇するたびに祖先の付け替えが行われているというところで、まさに本来は母系であったものを男系の系図に作り上げるための作業だったのでしょう。よく見つけたものです。おかげで複数の一族が複数の祖先をもつことを立証しています。古代からある一族名の方はそれをみるだけでも楽しいと思います。

あと希望としてはさすがに男女系の系図は理解するのが大変なのでだれか３ＤデータにしてＶＲでみれるようにしてほしいなあとおもいました。

よく皇室の男系か女系かという議論がありますが、ようするに中国から儒教の考え方が入ってきた奈良以後のままにするかそれとも奈良以前の古代のやり方に戻すかという一種の儒教の是非の議論なのです。

習慣とはなかなか変わらないものです。奈良から１００年以上あとの源氏物語であれだけ通い婚がふつうであったことが描かれています。ですから道長も奥さんの家に住んでいるのです。実際そのころの天皇もよく母方の実家にもどります。

奈良以前、もともと日本がどんな社会だったか想像がつきます。

これは儒教がより強い韓国でも同じようです。韓国の歴史ドラマをみていると出産した胎がいかに高貴かで子供の身分がきまります。これはこの本が主張している日本の古来のやりかたとそっくりです。韓国でも古来からの風習はなかなか消え去らないのでしょう。最初韓国は儒教の国だから男尊女卑なのかなとおもっていたら韓国の歴史ドラマをみていて母親が両班でないと子供は両班になれないという規則を知って、あれ以外に女性優位の社会だったのだなあと思った記憶があります。八百屋の娘の子供が将軍になれる日本とはだいぶ違います。

では、また来月に。

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