寒椿の少女 紗々 亜璃須(著)
今回紹介する本は、中華風ファンタジーです。
ファンタジーというのは架空の世界をいかに魅力的につくるかで、 物語のおもしろさが大きくかわってきます。
しかし、中国の仙人を利用したファンタジーで十分魅力ある世界をつくるのに 成功している例はあまりありません。 私はそのような話の中では西遊記が一番気に入っていますが、 この話は仏教説話なので 道教系の仙人はあまりいい役が割り振られていなく、大分おとなしく描かれているのです。 実際は、封神演義を読んでもわかるように、 中国の本当の仙人というのはずいぶん生生しい性格を持っています。 やはり、他の国の文物が日本に伝わってきて日本人ごのみになった ものと、本来のものとは変わってくるのでしょう。 中国物でうまく日本的に消化したと思われるのは、デザイン的には ドラゴンボールやらんま1/2です。しかしおそらく、 中国の人がみると少し違うように思うのではないでしょうか。 たとえば、スウォーズマンのような特撮系香港映画の中では、 空を飛ぶ場合は、空を飛んでいる間足を動かして、文字どおり空を駆けています。 しかし日本人にとってはドラゴンボールやウルトラマンのように 足を動かさずに飛んだ方が自然に思われます。実際には空を飛ぶ人などいないのですから 民族ごとの無意識的な感覚の共有にしかすぎないのですが。たとえば、司馬さんの播磨灘物語 には、黒田官兵衛が足をばたばた動かして仙人が空を飛んでいる絵を書いていると 紹介されています。おそらく中国の文献により親しんでいた昔の人はより中国人に近い 感覚を持っていたのでしょう。
本書は、そのような仙人の世界をうまく日本人にあうように創りあげて、 雰囲気のいい話になっています。 そして、より特筆すべきは、主人公の性格で その一貫した言動の見事さに圧倒されました。 あえて言えば、風と共に去りぬのスカーレット・オハラのような人物で 読んでいてすっきりします。風と共に去りぬは、終わり方が すっきりしていないように感じていたのですが、 本書は非常にすっきりとした読了感でより気に入りました。
それにしても、道教にしても仏教にしても老子やブッダの頃は 宗教というより哲学なのですが、いつのまにか多様な仙人や仏様が生まれて それらの上に多様な物語が展開するのですから、人間の創造力にはおどろかされます。
では、また来月に。
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