アグネス白書 氷室 冴子(著)
寄宿舎というのは、人によって好き嫌いがありますが、うまく適応できる人に とっては貴重な体験ができるものです。小柴さんの私の履歴書では、その 後各界の第一人者となった人物と一高時代の寮生活の中で交流があったことが 描かれていました。そのような広い交友関係がノーベル賞を得るような発想を支 えていたのではないでしょうか。白州さんの自伝にもアメリカのお嬢様学校の 様子が少し載っており、彼女の性格の一端がつくられているのがわかります。
さらに、寄宿舎というのはそこだけに通用する多様な規則や習慣がありますの で、うまく話を作るととてもおもしろい話ができます。最近の作品では、 ハリーポッタではイギリスの中高生の風情が描かれていますし、映画のアメリ カンビューティでも、アメリカの大学の寄宿舎の様子が描かれています。
今回紹介する本は、日本の架空のミッション系の学校の寄宿舎を舞台にして、 その中での生活を描いた作品です。氷室さんといえば、なんて素敵にジャパ ネスクが有名ですが、さすがに話の作り方がうまくて、次から次へと主人公は 難題につきあたりそれを必死にこなしていくので、読み手はあっという間に物 語りの舞台に引き込まれます。
このような楽しそうなミッション系の学校があったら、娘でもいたらいれたい ものです。もっとも、よほどの金持ちでないとその支出には耐えられないでし ょうが。
では、また来月に。
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