今月の本 1703号 平成27年(ラ)第33号 川内原発稼働等等差止仮処分申立却下決定に対する即時抗告事件 (原審・鹿児島地方裁判所平成26年(ヨ)第36号)決定要旨
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(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)




今回は政治から離れようと思っていたのですが、 大阪高裁でとんでもない判決がでたので、 また原発関連裁判資料を選ばざるを得ませんでした。 大阪高裁の決定書はみつからなかったので、 引用している福岡高裁のものを選びました。 ただ、要旨を読んだだけでつっこみどころ満載 でした。裁判官の方はいったいどうしてこれを素直に引用できるのでしょう。 そう思ったので、今回は要旨のみあげました。 余裕があるかたは決定書も読んでみてください。

第3 当裁判所の判断の1(1)だけ読むだけでも いかに問題かがわかると思います。 最初に人格権はきわめて重要だといいつつ、 つぎにどんな事象が生じても放射性物質が周辺の環境に放出されることのない安全性を 確保することは不可能だと断定しています。 私にはこの判断だけで原告の勝利の判決しかありえないと思うのですが、 ((3)項で裁判官が要求している具体的危険を裁判官自身が認めているのですから。) 原子炉施設の安全性をどの程度の安全性を許容するかの社会通念 を基準として判断するという不思議な基準を持ち出してきます。

しかし、憲法には 「<<<すべて>>>国民は、 個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、 公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、 最大の尊重を必要とする。」とあるのです。 ですからそのような人権を制限する場合には どうしてもそれが必要だという必要性(公共の福祉)があるかないか が本来議論されるべきものです。 (つまり電力会社の見掛け上(事故時の保険金の引き当てが少ないことやスエーデンの原発のような 安全策をとらないことなど簿外リスクがいくらでも隠れています。)の会計をよくするために 住民や国民(もう一度事故がおきたら日本は終わってしまいます。)に負担をしいていいのか という判断であるべきです。) 社会通念とかいう曖昧なもので判断してよいわけありません。 (まあ、この基準であっても再稼働反対の世論の方が多いのですから 現在の安全性で満足はしていないのです。原告勝利のはずではあります。)

そして(2)では規制法が社会通念が要求している安全を担保しているという 論理になっています。 規制法はこれまで述べてきたように パブコメや世論をみても社会通念が要求している安全ではなく 規制側と事業者側の都合で折り合ったようなものになっています。 厳しく規制を求める委員の方は退任させられてしまうのです。 なぜかテロ対策や大規模対策ができていなくても 再稼働に許可がおりてしまうのです。 ついには免震棟は無理だからと耐震棟で事故対策を行うという 方向に変わってきました。 免震棟で防げないという新しい知見がでてきたのなら 防げる技術ができるまで再稼働を待つというのがバックフィット です。実際には小惑星がみつかっても鋼材に不良がある可能性が判明しても 止まりません。裁判官のかたはバックフィットがあるから安全としていますが まったくないに等しいのです。 しかも、規制法は福島事故の知見を反映しているとしていますが、 最近放映されたNHKの番組をみてもわかるように、 安全対策の機器を実際に使った訓練すら行われていないのです。 一号炉の事故は訓練していれば防げたかもしれないのです。 そうなるとほかの炉も対策がしやすくなり もっと被害は小さくなったことでしょう。 福島の知見すら十分に反映せずに 若干の津波と地震対策を行っただけでなしくずし に再稼働にすすんでいるとしかみえません。

マスコミにも法学部出身の人はいるはずです。 なぜこのような論理を咎めないのでしょうか。

最近朝鮮有事の可能性がニュースになっています。 直ちに止めるように 防衛省が動くべきなのになぜ動かないのでしょう。 原潜を持っていない自衛官の方は知らないのかもしれませんが、 原発は止まるまでに数年以上かかるのです。 よく言われる冷温停止状態というのは 新幹線でいえば、ブレーキがかかりましたという状態なのです。 新幹線はそれから2km走らないと止まれません。 原発の場合もブレーキが壊れても大丈夫な状態になるまでに 数十年以上かかります。ただ、危険性が時間とともに下がりますから 数ヶ月から数年止めただけで安全性が飛躍的に増すのです。 (もちろんミサイル攻撃の危険があるのなら 燃料棒は取り出して安全な場所に移動させるべきです。) (以前ご紹介した本の著者が述べておられるように 原発は平和でないと動かせないのです。 今回の規制もミサイル攻撃をどう防ぐかではなく それでできた被害にどう対応するかを 準備しておけばよいというものなので、 住民や国民は被害を被るのです。)

このような行政の不作為のときに 動くのが裁判所のはずです。

そもそも政府の規制を満たしても事故確率は半分か三分の一にしかならないと 政府自身が試算しています。 裁判所は良識の最後のとりでとして 国民全体がよいとしても 日本が破滅するかもしれない機器をそのような高い事故確率で運用してはならない と止めるのが役目ではないでしょうか。

そして、前にも述べましたが、 再稼働賛成派の方ほどこのような細かい安全に気を配って政府や電力会社に 注文をつけるべきなのではないでしょうか。

日本にそういう方がみられないことこそ 私が再稼働そして原発反対の判断をするようになった 最大の理由です。 (福島事故まで日本の事故レベルは上がってきました。 このままではさらに大きな事故がおきて不思議はありません。)

では、また来月に。

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