今月の本 1612号 貧乏お嬢様、メイドになる リース・ボウエン 著 古川菜々子 訳

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)


今回は年末なので気軽な小説にしました。

英国の階層社会がどうなっているかが よくわかる作品です。

向こうの上流階級の暮らしがどんなものかは 日本にいるとなかなか想像できないのですが、 超上流だけど貧乏という設定がうまくて、 お金がなくてメイドを雇えないことから 結局メイドがどうやっているかを 自分で体験する羽目になるため、 読者も自然に仕える方と支えられる方 の両方の体験ができます。 当然お嬢様はなにも知らないので そういう生活を何もしらない日本人も 共感しながら物語の中に入っていけます。

NHKでも英国版大奥のようなドラマをやっていましたが、 こういう導入なしなのでだいぶとっつきがよくありません でした。そういうものが一般的なので英国ものはあまり流行って いないように思われます。

まず。この本を読んでから英国もののドラマなどを 観たらだいぶ人気もでてくるのではないでしょうか。

QEDシリーズで作者の方がいみじくも指摘していましたが、 上流の人にとって使用人はまったく見えないものなのです。 にもかかわらずいないとなにもできません。 それどころか怒らせるとどんなことされるかも わかりません。いったいどんな気分なんだろう と思っていましたが、この本を読んでみて だいぶ納得しました。

と同時に階級社会の感じも体感できます。 どの階級に属すかで態度もできることも まったく違ってきます。 日本も戦前まではふつうにそういう感じだったのですが、 戦後ほとんどそういう場面はなくなりました。 最近では使用人がいる家などほとんどなくなりました。 しかし、トランプ氏の政権閣僚の大部分は高額所得者というような ニュースを聞くとまたそういう階級社会にもどるのではないか という不安が私にはあります。

いまだに階級制度がいくぶん残っている 海外で冷たい態度をとられたときは 階級が下にみられている可能性があります。 階級の違いでどういう態度に差がでるのかを 学ぶにもよい本だと思います。 主人公がどっちにもなるのでわかりやすいのです。

そして、この本を読んで本当にそういう社会に逆戻りしてもよいのか よく考えるべきでしょう。

では、また来月に。

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