今月の本 1501号 新潮文庫 ローマ人の物語42 ローマ世界の終焉(中) 塩野七生 著
(
今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)







今月はこういう文書を全世界の人が読まねばならぬものとして選ばねばなりませんでした。

以前に今の状況とローマ帝国の末期が似ていると 述べましたが、最近のイスラム国のやり方をみていると ついにこの巻にまできてしまったという感じです。 なにしろこの巻で西ローマ帝国は滅びてしまうのです。

そうならないように全世界の人がこの本を 読んで対策すべきでしょう。

アッティラの項を読むと 方法論はイスラム国と同じように 思えることでしょう。 ですから対応を間違えると 西洋文明がまた滅びてしまうかもしれないのです。

最近は恐ろしいことに 民主政治の限界や独裁制の優位をいう方もいられますし、 全世界的にそういう主張の党が増えているようです。 そう言う方にこそこの本を読んでほしいものです。 アッティラのフン族も西ローマ帝国に実質的にとどめを刺した ゲンセリックのヴァンダル族も 有能な指導者が死ぬと国は衰退し、 あとには混沌だけのこります。 独裁制は効率的なので破壊はできますが 創造と維持はできないのです。

では末永く安定した国家を作るにどうしたらよいかは、 歴史嫌いの人のための歴史入門でご紹介している 同じ塩野さんの著作である海の都の物語が 参考になると思います。 アッティラから逃げるために海の上に 都市を作りましたので、 この本とも時代的に続いています。 塩野さんも1節を引用していますから、 この本を読んだあとに読むと 読みやすいことでしょう。 ローマ建国時もそうですが、長く続く国には 高い理想理念があってそれを支えるシステムと さらに良くしようとする有能な人びとがいます。 日本でも首相公選制を唱える政党は いくつもありますがなぜベネティアの方法を取り入れようと しないのでしょうか。 途中に抽選と推薦が入るので 利害団体の影響を 確率的に防ぐことができます。 非常に面倒ですが コンピュータが発達した現代 さほど苦労があるともおもえません。 理想の状態へ国家システムを導こうとする 人の数が今の日本では足りないように思われます。 (もっとも日本以外の多くの国でもそういう傾向なので 心配です。さすがに何度も革命を経験しているフランスでは 大変ではあるが表現の自由を守ろうという人々がたくさんおられるようで 少し安心しました。 不幸な事件があったように表現の自由を守るのには大変な摩擦を覚悟しなければ なりません。なぜなら絶対に守らねばならない境目は微妙だから どうして摩擦が生じます。そこは話し合いで互いの理解を深めていくしかありません。 弱い人々を表現で攻撃するようなことはあっては なりませんが、大きな勢力や偉大なものについての表現は 最大限保証されなければなりません。 そうしないと政権交代もできません。 (日本では放送局すぐに自粛してしまいます。民主主義が機能しないわけです。 最近裁判所が原発反対のテント撤去を命じてしまいました。 まるで中国です。本来であれば司法当局がより民主主義を機能させるために より広く表現の自由を認めるべきでした。 デモももっと自由にできるようにしないと あっという間に統制社会になってしまうことでしょう。) そして、そういう偉大なものの中には宗教も入ってしまいます。 無批判で宗教を受け入れていたら 西欧諸国はイスラムの配下となっていたことでしょう。 以前も説明しましたが、 ユダヤ教の神は人間の存在すら意に介さない超絶的な存在に感じます。 そしてキリスト教の神は理想の人間性を持っているように思われます。 一方イスラム教は、砂漠で生きる部族により実践的な生き方を 示しめしているという感じです。 片方の頬を殴られたらもう一方も差し出すような生活をしていたら 部族が滅ぼされるという社会の中で生まれてきたように思われます。 そしてその影響で今度はローマー帝国からカトリックへと生き残っていった キリスト教が変質します。 ある意味より実践的になりイスラムよりとなったように私にはみえます。 (今でもカトリックの方の多くは頬をさしだす部分を文字通りには 解釈していないようです。(そんなことをしたら領土も富もどんどん減って しまいますから。)しかし、ローマ帝国や蛮族をキリスト教が教化できたのは まさにこの部分ではないかと私は思っています。無抵抗に次々処刑されていく 人々を見たら普通の人間であればなにか感じるものです。) しかし、聖書を読むとやはり理想的なキリスト教の姿がうかんで きます。そこで何度か挫折しつつ宗教改革が始まりプロテスタントが生まれてきます。 今度はそれに触発されてカトリック教会も 徐々に理想的な方向へもう一度変化していきます。 ちょうどルネッサンス時期でギリシャローマの思想が 入ってきたことから、理想的な人間とはという命題から いくつもの思想や社会システムが考案されました。 その結果、人々が自由に最大限の能力を発揮できる 人権主義や啓蒙主義や民主政治が生まれて 結果的に産業革命までおこして それまではイスラム教が制覇していたといってもいい 世界をキリスト教が制覇するまでになったのです。 (最近のコンピュータはクラウドといって たくさんの安いコンピュータが一度に動いて仕事をしています。 昔の大コンピュータがひとつあってそれが全部の仕事を するよりよっぽど効率がよいのです。 社会システムもまさに同じです。 独裁制の国より国民一人ひとりがやる気をもてる国の方が 成長するのです。) (その点イスラム教はまだ宗教改革前のカトリックの状態のように感じます。 イスラム教と民主制はなんら矛盾しないはずなのに 一番期待したトルコでも宗教が優先の方向へ進んでいる ように思われますし、各地のイスラム原理主義の方々の 主張は民主主義を否定してしまっているようにみえます。 もしキリスト教に匹敵するようにイスラム教が発展することを願うのであれば イスラム教においても一人ひとりの人権を確保し 政教分離をして民主主義を取り入れる なんらかの宗教改革が必要だと思います。)

このシリーズのこの本を読むのなら さらにその前のころの本もできれば読んでほしいものです。 そうするとさらに現代への示唆が手に入ります。 塩野さんはそこでローマ帝国が衰弱した原因は 一神教のキリスト教をとり入れたことだと考察しています。 そのために本来開放的であってローマ帝国が 閉鎖的になったということです。 私はもっともだと思いますし さらにキリスト教化後の人々の行動が 神に頼るようになってしまって合理的にものごとを 考えなくなったことも一因のように思われます。 (それまでのローマ人は気まぐれなギリシャローマの神様などを便りにしてたら 身が持ちませんから一生懸命自分で考えて合理的に決断しているのです。) 結局強力な一神教が問題のように見えるのですが、 実は信者の一神教への理解が不足していることこそが 問題の根幹ではないかと思っています。 一神教とは全知全能の神様がこの世にたった一人いるという宗教です。 この設定自身がじつは論理的にいくつかの問題を含んでいます。 たとへば悪魔はなぜいるのかということです。 日本のような多神教では悪い神様がいるのだろうということで 話は済みますが、一神教では神は一人しか許されません。 しかも神は全知全能であるので、神の許しなくば何事も起きないはずなのです。 つまり悪魔も神の許しのもとで存在しているということになります。 実際キリスト教では天使の一人となっているようです。 ですから一神教ということの意味を深く理解すると、 悪魔ですら神の恩寵のもとにあるのですから、 まして異教徒や異教の神もすべて神の恩寵のもとに存在することになります。 一神教であればこそ異教徒だからといって無下には扱えないのです。 排他的な一神教など本来ありえないのです。 そうなると問題は複雑化しますから自分で考えて合理的に決定せざるをえなくなります。 この意識を世界の半分以上を占める一神教の信者の方が理解したら どれだけ世界が平和になることでしょう。 なにしろ世界の優秀な人のほとんどが どれかの一神教の信者となっているのです。 そしてそれらの宗教が絶えず争っています。 それらの一神教ももとは旧約聖書から始まります。 本当に神様はそのような状況を望んでいるのでしょうか。 上記のような認識であれば、 興福寺の阿修羅像をどちらかの眺めているかの違いだと 理解できるのではないでしょうか。 そういう理解のもとでは宗教間の争いごとはなくなることでしょう。 そうなるとより人類にとって重要な問題に人的リソースが振り向けられるので 人類がより発展することになるのではないでしょうか。

ちなみにここまで読んできて 宗教について調べようと思った方もいらっしゃると思います。 前にも述べましたが、哲学やそれと近い宗教は 文字道理生命の危険がある学問であるので学ぶには注意が必要です。 最近は聞きませんが昔は哲学科の学生が自殺したなどの記事をよくみたものです。 論理の袋小路に入ってしまうことがあるのです。 そこでそうならないために、 老荘思想をまず学ぶことをおすすめします。 胡蝶の夢の話からもわかるように 発想の転換やさらに論理をさらに外から見る視点が身につきます。 論理的袋小路に入ってしまったら 一旦老荘的考えかたで視点を変えてとりあえず実社会に戻ってくる ことができます。登山におけるヘリコプターのように使えます。 なにしろこの世は夢かもしれないと思ったら たいていの袋小路から開放されます。 そして登山と同じでしばらく休憩して体力が回復したら また登りたい山(宗教)に分け入っていけばよいのです。

では、また来月に。

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