今月の本    1404号 太陽の闘士 ショーン・ウイリアムズ&シェイン・ディックス 著 小野田和子 訳
(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)


今月は海外のSFです。 以前も述べたように海外もののSFは翻訳がぎくしゃくしているように感じて 不得意なのであまり読んでいなかったのですが、 この本はもとがおもしろい上に翻訳もすばらしく まったく翻訳を意識せずに話を楽しめました。

内容はネタバレにならないように大雑把にいうと、 STARWARSのエピソード4で帝国軍がもう少し有能だったら こういう話になるだろうという感じといえばよいでしょうか。 (しかもSTARWARSで常に描写が物足りない(初期はCG技術が追いつかず、 あとになると逆に艦が多すぎてなにがなにやらわからない描写となっていてもったいないです。) と常に思っていた艦隊戦から始まるなど、よりレベルの高い作品となっています。) ですからつかみはばっちりで一気に小説の中に引き込まれます。 SFではもっとも大事な世界設定もしっかりできていて安心してSFの世界を楽しめました。 さらに、この本だけでも楽しかったのに、 この本はあくまでも銀河戦記エヴァージェンスシリーズの第一巻であって、 まだよんでいない二巻目三巻目が海外で賞をとっているそうなので、 今後いつ読もうかと楽しみが増えました。

さて、この話でも話の重要な話題として新しいテクノロジーがでてきます。 この小説のようにそういうものはよほどの注意深さで設計と運用を しないと大変なことになるのです。 (もっともこの小説の登場人物は優秀でそこまで考えていたようではありました。 (現実にもそうあってほしいものです。) 最終的には人間の決断と知恵が登場人物の予想を超える結末に導くというところが、 私の予想もこえてみごとな筋書きで、すっかりこの作者を気に入ってしまいました。)

現代もまさにつぎつぎと新技術がでてきますから、 よっぽど気をつけないといたるところに落とし穴ができて安心して暮らせないことになります。 たとえば最近問題だと思うのはSTAP論文騒ぎで、 コピペ問題もでてきていているので、 査読や発表前の論文を検索してしまうのではないかということです。 そういう場合、無料サービスを使えば、たいがいの場合ビッグデータとして 検索内容は再利用されるので うまくプログラムすれば発表前のアイディアを類推するようなことはできてしまうことでしょう。 たとえ有償であってもそういうデータについて守秘義務契約は結ぶべきですし、 ソースやそういうデータに関するアクセスログやそういうサービス業者のサーバーやモニタールームの監視カメラ映像は 当然要求するべきなのですが、そういう慣行を聞いたことがありません。 そこまでするなら、全データを取得するなり借りるなり買い取って組織内部においてシステム運用した方が 手間がかかりませんが、さらに料金が必要となることでしょう。 このように安いということはそれなりのリスクを含んでいると思われるのですが、 クラウドやインターネットの技術はでてきたばっかりなので ほとんどの方が無頓着に使ってしまっているように思われます。 (もっとも大多数の方はノーベル賞級の論文や青色LED並の特許とは無縁ですから 無料サービスを使っても問題ないことでしょう。しかしだからといって学生レポートを 検索したら優秀な学生のノーベル賞級のアイディアがそのまま流出するということもあるでしょう。 ですから、出版前の論文や査読論文の検索は当然無料サービスは使うべきではありませんが、はたして レポートを無料サービスで検索してよいかは私にも判断がつきません。 一応公開されることを前提に優れたアイディアは書かないようにとレポート出題時に申し渡してから レポートをださせるのでしょうか。なにか矛盾している気がします。 (いろいろかんがえてみましたが同じアイディアがあったら検索しますとあらかじめことわっておくのが一番良いやり方である ように思います。そうなるとかりにコピペしたとしても よしとされる場合はありますが、他の人と違う文献をみつける才能というのも ひとつの有能な才能だと思います。また、かりに自分で考えたとしても 他に同じ考えの人がいるなら新規性はないことになりますから 検索して情報がもれても問題ないと思われます。) あるいはtwitter社が不正をしないことを信じるのであれば、 論文を一行ごとにtwitterに投稿させるというのも手かもしれません。 なんでも米国が全データを保存するらしいので、 いつアイディアを考えたかの証拠になります。 論文ではあるていど有効かもしれません。 (もっともそのツイッターをみて先にかかれる可能性もありますが。) ただ現状の法律では特許はとれないことでしょう。)

べつにこの事柄以外にもITのような最近の技術は 埋めるべき穴が多数あります。 本来は時間とともにそういう問題は解決するはずなのですが、 なにしろソフトのサポート期間が長くて10年程度ですから たえず問題が再生産されているようなものです。 ITはあくまでも人のための道具です。 同じ道具でもタンスや時計は数百年前のものでもちゃんと使えています。 (ローマ時代の建物に住んでいる人たちさえいるのです。) そういう長期間の技術の熟成はやはり必要でしょう。 ソフトやIT機器の保証期間は100年以上に義務づけるべきでしょう。 (そしてもし保証が無理になったら、その時点で設計図やソースを公開して特許や著作権も放棄して フリーウエアとして万人がサポートできるようにすべきでしょう。)

では、また来月に。

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