今月の本   1310号 最終退行 池井戸 潤 (著)

(今回はメルマガ発行後の誤字脱字の訂正や状況の変化や説明を加えたい点について随時加筆しています。)






今回ご紹介する本は、 あの半沢シリーズの作者が半沢シリーズの前に書いた本です。 十分半沢シリーズの香りがしていますので、 半沢シリーズを読み終えてしまったという方におすすめです。 報道によるとTBSは原作が少なくてどうシリーズ化するか 悩んでいるとのことですので、 こういう本をもとにしてスピンオフ作品をつくっていけばいいのではないでしょうか。 なにしろ半沢と同じ銀行の物語なのです。

半沢直樹シリーズのドラマをみて 久しぶりに日本でも優秀なドラマ製作者がでてきたと喜びました。 伏線をはった上で、その伏線から予想される結果をはるかに越える すじ運びでスカッとさせるという日本のドラマは久しぶりです。 (もっとも韓国ドラマではよくみられます。 一時は日本と韓国の放送界の実力差がそんなについたのかと がっかりしたのですが、さらによくみてみると 韓国でも脚本家や監督などの人によると知って少し安心したものです。 (時代劇であればチャングムの誓いのグループのドラマがおすすめです。 上記のようなおもしろさのほかに、登場人物ごとに服の色が違うなどの 細かいテクニックもつかわれていて感心しています。(最近の大河ドラマなどは 時代考証がきつすぎて同じような着物をきた人が何人もでてくるので 歴史に詳しい私でも人の特定に時間がかかります。まして歴史に興味ない 人にはちんぷんかんぷんですじがまったくわからないことでしょう。) そして、そういうテクニックだけでなく ドラマを通して人間はこうあるべきという哲学がしめされていて 感銘をうけます。))

ただ、この本の質からすると半沢シリーズのおもしろさは 原作に負うところが多いように思われます。 本来ならば平凡な原作でも原作のあらすじに加工して よりドラマをおもしろくさせる脚本家や監督が必要なのですが、 もういなくなってしまったのでしょうか。 (たとえば、ショムニは原作漫画はたいした量はないのに 質の高い娯楽ドラマをつくっていました。 (話によっていては3つぐらいの話が同時進行していて 驚嘆した覚えがあります。))

このように、最近思うのは バブル期に空前絶後のレベルに達した多くのものがすたれてしまっていると いうことです。よくいわれるIT技術もそうですし、 上記のようなソフト作成力もすっかり衰えたように思われます。 はっきりいってバブル期に(日本特有の)ハードウエア的進歩はなにもなかったので、 唯一ソフトだけがバブルといってもいいのですが、 そのソフト作成能力もほとんど忘れさられてしまったようです。 あの火星開発を2度もできてしまうほどの富を 日本はまさにドブに捨ててしまったように思われます。

そうはいっても、まだ当時の方は多く現存されているので、 まだ再興させるチャンスはありますし、 バブル期の遺産を活用することこそ日本を復活させる鍵だと思っています。

そこで、東京オリンピックの開会式や閉会式で世界にバブル期のソフトを紹介 するようにすべきではないかと思います。 若い人にバブル期のソフトをきちんと示して 技術を伝承するよい機会です。 また世界的にみてもルネッサンス期に匹敵する芸術が生み出されているので、 世界に日本をアピールするよい機会だと考えます。 本来はまだクリエーターが元気だった 長野オリンピックのときにやるべきでした。 しかし、国体レベルのもので非常にがっかりした記憶があります。 (よかったのは最後の花火くらいでしょうか。 もっとも北京オリンピックも(国威発揚の)力が入りすぎて わけがわからないものになっていました。 北京パラリンピックの演出が大変素晴らしかっただけに残念でした。 このように東洋では優秀なクリエーターが自由にできないので なかなかEU並みのものができないようです。 東京だけでなく平昌の演出も心配です。) 結局お役人ではクリエータの人の良し悪しは判断できないのだなということが よくわかりました(そのため今回実名で優秀な方を以下に挙げておきました。)ので、 オリンピックをやることは 日本のよさどころか悪いところを世界にみせることになると思い、 そのあとオリンピック招致は反対の立場をとるようになりました。 (実際その悪い傾向は早くも見えてきています。 最近のエンブレムの騒動では結局 審査委員が選んだものと違うものにかってに事務局が 変更してしまっているようです。 しかもその変更されたものは 似ている似ていない以前に 黒に金に銀という暗い色です。 あんなエンブレムが競技会場や街中にあったら 街中が暗い(よくいえばおちついたですが)イメージとなります。 しかも元のものからそうしたのは 事務局の指示ということなので 官僚出身者が多い事務局がかってに オリンピックのイメージカラーを暗くした ということになります。 大会コンセプトからすると 未来への希望を詠うべきエンブレムのはずなのですが、 日本の現状はこれからも変わらないから覚悟するようにという 官僚からのメッセージなのでしょうか。 芸術分野は全体を統率すればよい官僚機構と違い アップル社の製品のジョブズ氏の有無による差からもわかるように よほど上にデザインにセンスがある人がいないとおかしなことに なるのです。) ですから、東京オリンピックも反対です。 オリンピックをやるくらいなら東北復興や これから確実にくる東海南海トラス地震にそなえるべきなのです。 ただ世界に公約してしまったのですからやらざるをえません。 しかし、競技場に3千億もかけるのならば、 開会式や閉会式にこそ一千億以上かけるべきです。 今回のオリンピック予算もですが、 (報道によるとスポーツ予算はわずか200億円程度で しかも9割近くが強化選手用で一般の人の スポーツ振興用予算はわずかしかつかわれていないようです。 まるで旧ソ連みたいでスポーツ振興というよりも 国威発揚が目的のようです。本来は逆で、 各地のスポーツセンターで一人一人が自由に(下手でも)スポーツに親しむようにすることで 競技人口が増えて結果的にレベルが上がってメダルが増えて オリンピックを呼ぶというふうにあるべきです。 長野オリンピックでも人気のない競技には動員をかけていたようですが 今のままでは8万人ものスタジアムをつくっても 満員になるのは数回程度という寂しい結果になるのではないでしょうか。 なにしろ日本選手がでていなかったり成績の悪い試合は放映もされない のですから、スポーツの裾が広がるはずもないのです。 (他国のメダリストも写らないのですから国際交流もすすむようには思われません。)) スーパーコンピュータ京も大部分が建築費用にあてられています。 ですから、一向に技術や文化の向上がみられないのです。 (8割以上の予算が開発陣が使えたら生産工場を手放すこともなかったのではないでしょうか。) どんな予算項目であってもせいぜい建築費用は全体の1/4程度に抑えないと バブル期のように建物ばかりできてなにも残らないことになります。 (その建物すら数十年で建て替えててしまうのです。 コンクリートならばローマのコロッセオのように数千年保たすように 作らねば国民の富がいつまでたっても増えません。 数十年でよければ仮設や木造で十分です。 まして今回の国立競技場は三丁目の夕日の映画にもあるように 戦後復興の象徴です。 本来なら国宝に指定すべきものです。 それを潰してしまうというのは官僚の方々は 戦後の日本の成功になにか文句があるのでしょうか。 (とはいってもこれもつくることは国際公約なので まったくつくらないわけにはいかなくなっています。 そこで、屋根の部分だけ樹脂性のの布でつくって 現在の競技場にかぶせば似たようなものになるでしょう。 そしてそのころには実用できる曲げられる有機太陽電池が 開発されたそうですからそれを、貼っておけばあの微妙な色合いに 近くなることでしょう。しかもエコなので今回のオリンピックの理念にもあいます。 座席は周囲に仮設で作れば三万席程度は追加で確保できることでしょう。 (せっかくロンドンでは仮設でつくったのですからそれをかりてきても使えるのではないでしょうか。) 布であれば予算も相当減らすことができます。 可動式屋根に數百億とか報道されていますが、 コロッセオのような布の簡易式なら数億でできてしまうことでしょう。 よっぽどローマ人の方が合理的です。もっと歴史に学ぶべきです。 どうせ台風のときは東京ドームの公演でも中止となるのですから、簡易式で十分でしょう。 (本来代々木体育館の屋根も布であるべきでした。 そしたらどれだけエレガントだったことでしょう。 そして十年ごとにでも取り替えればよいのです。 それでも予算は相当削減できるはずです。))) そしてその費用は、財政破綻寸前の国ではなく都が負担すべきです。 都程度の予算規模の国々が開催しているのですから十分できるはずです。

現在のクリエータはお金のかけかたがわからないでしょうから、 理想をいえばバブル期のフジテレビを作っていた人に 一千億円託して開閉式を含めてオリンピックの運営を委託するべきなのです。 (個人的にはバブル期でも常に品のあるセンスがあるものをつくっていた 石原隆氏が総合プロデューサにはふさわしいと思います。 また音楽的演出には、カールスモーキ石井さんが、 自分自身が目立たないように抑えることができれば、最適だと思います。 バブル期に豪華で大規模なコンサートはいろいろな方がなさっていますが、 通常はアーティストと芸術的演出者が異なります。 その結果微妙に意図がずれているものが多いです。 私がみたなかで一番音楽と演出が一致しているのが、 自身が美術大学をでていて美術的感覚をもっている石井さんが率いる 米米クラブのコンサートでした。 おそらくお金をかければかけるほど大きな催し物であればあるほど さらにすばらしいものになるような才能を感じました。 さらに、311で被災されていることからも 復興というテーマに沿っているように思われます。 ただ、若いころは自分自身が目立たないとやる気が失せるようにみえました。 もし年取って、他のアーティストや選手観客をたてたうえで、 モティベーションを維持できるようになっていれば 最高の開会式や閉会式が演出できることでしょう。) ただ、そのころの方は年をとっているので 新しいものは生み出せないかもしれません。 しかし、上記にしめしたように バブル期の成果を示すだけで十分世界を凌駕できるものがつくれるのです。

東京オリンピックがどうなるかの参考に東京国体の開会式をみていましたが、 一応長野オリンピックのような国体レベルといったものではありませんでしたので 少し安心しました。 ただ、過去の日本のレベルから比べたらはるか下です。 たとえば、レーザービームが使われていましたが、 原色なのでやたらに闇が強調されていました。 これは現在のライブで普通に使われるものなのでだめということはないのですが、 すでに技術開発によってレーザービームは自在に色が作れるのです。 そしてどういう色を使えばよいかは日本の夜景をつくった石井幹子さんの事務所が 知っているはずです。 平和の祭典であるオリンピックで闇を強調する演出はとるべきではありません。 (この基準で多くの日本のクリエータが弾かれます。(以前述べたように 今の日本では闇の表現や過激表現が多すぎます。そういうものを使わなくても 素晴らしい表現ができるクリエータにまかせるべきです。)) 石井さんのつくる夜景は やさしく暖かいもので日本中の夜の景色が美しくなりました。 そういう色でおもてなしするべきでしょう。 最近では予算を削減しているのか、 ほかの人がデザインするようになって、 クリスマスの光景もだいぶ品がないものになっています。 もっとデザインにお金をかけるようにするべきでしょう。 (スカイツリーの色も実物をみていないので正確にはわからないのですが、 選考された色と少し違う色になっているようにTVでは見えます。 選考された色はもっと粋なものにTVでもみえていました。 表参道ヒルズも日本の方の設計だからか 当初の設計のすばらしさが実際のものでは半減してしまっています。 やはり建設会社や施工主に強くデザイナーが主張できないのでしょう。 六本木ヒルズは外国のデザイナーなので、 近くにわざわざ場所をつくって実物大の模型を作って 質感などをきちんとチェックしたそうです。 ですから実物からも設計者のセンスが感じられるものになっています。 (もっとも夜間照明は当初の石井さんの案の方がより上品でよかったと思います。)) ただ時期的にはきわめてぎりぎりで、 石井さんはもちろん、宮崎監督をはじめ 日本のソフトパワーをつくりだしてきた方々はいつ引退してもおかしくない 高齢となってしまいました。 本当かどうかはしりませんが、 秋元さんですら5年後に引退というような報道がされています。 秋元さんのおかげで日本的アイドルが復活しました。 (というより、日本の音楽産業全体が復活したのではないでしょうか。 携帯アプリなどから音楽ファンを取り戻して、 CDを買ったりコンサートに行く習慣を植え付けたという意味で 秋元さんやAKBにはクラシックを含めた音楽業界やファンの方は 足を向けては眠れないと思います。 音楽アーティストの競争相手はAKBではなくゲームやスマホやアプリなのです。 (そういう意味でいいともの終了は、他の局にとっても大きな影響があって、 平日の昼間にTVをみるという習慣の 消失を意味するように思われます。実際いいともが始まるまでは 時計代わりにみる程度だったと思います。)) 世界的にみて日本のようなアイドルはいないので、 世界に誇るコンテンツです。 ウイーンにワルツを聞きにいくように、 日本にアイドルソングを聞きに世界中の人をこさせるだけのコンテンツは できあがっています。 ただAKB関係のかたは十分過ぎるほどはやっていると思われているようですが、 現状程度ではまだ世代間の広がりがないように思われるので。 モーニング娘の人気や過去のアイドルブームが あっというまになくなった歴史を知っているだけに、 7年後でも人気を維持できているかは、とても心配しています。 以前にも述べましたが 日本はあまり自分のコンテンツを客観的に評価するしくみがありません。 そのために世代や時代が異なるとまったく評価されなくなってしまい、 芸能界ではなかなか恒常的な評価がえられないようになっています。 (本来紅白にでるくらいのアーティストなら自分の劇場を持って そこにいけばその人のショーがみれるというような生活が 一生おくれるべきなのです。(R1やM1の優勝者も同様です。)) 日本人自身が自分たちのものをもっと評価するようにするべきでしょう。 (クラシック好きな私がチャイコフスキー級だと思う作曲者だけでも 服部親子をはじめ加古さん、渡辺俊幸さん、東野美紀さん、 吉俣良さん、本間勇輔さんなど多数おられます。 (独創的と言う意味では宮川泰さん、冬木透さん、弾厚作さんなどがおられます。) 日本語を理解できないと味あえないのでオリンピックで 紹介するのは難しいかもしれませんが、 六歌仙なみの才能のある方はニューミュージックの方々の中に やまほどいらっしゃいます。 教科書でもっと教えるべきでしょう。) そうしたら7年後には数々の素晴らしい日本文化を世界に紹介できることでしょう。

では、また来月に。

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