今月の本    1203号 科学11月号 特集ーチェルノブイリの教え

今回ご紹介するのは雑誌です。 というのも、昨年書いたような放射能被害について 割合詳しくはっきりとかかれているためです。

TVや新聞などで そういうことが詳しく報道されていればここで わざわざ紹介する必要はないのですが、 残念ながら可能性があります程度の 説明しかありません。 放射能の害は物理現象なので どのようにおきる 可能性があるのかを知ると 容易に 被害を避けることができます。

重要なことは、実際に被害がでるかどうか を時間をかけて調べる前に対処することです。 どうもそれが、不正確な情報を 流すまいとしているのか 具体的にこういうことが 起こり得ますという情報がほとんど 報道されていません。 報道されても簡略されて 報道されるので 具体的にどうすればよいかは わからないものがほとんどです。

たとえば、今回細胞でどのような 害があるのかを述べた記事がありますが、 ある割合で細胞の損傷を修復できない人 がいて、それを調べる方法があると かかれています。 であれば、東日本全体の人を調べて 該当者をより低汚染領域に移動させるべきですし、 そうすることで、被害をそうとう減らせることでしょう。 こういう詳しいことは普通は報道されませんので、 政策に反映されにくいのです。

あとは、今回の放射線被害を チェルノブイリと比較した地図があったのも ご紹介した理由です。 チェルノブイリの時の被害と今回の被害の 測定単位がちがうので、 比較できるものがあまりないのです。 (どうみても単位面積あたりのヨーロッパ方式の方が 正しい測定単位でしょう。日本のような 単位体積あたりの測定値ならば、 せめて深さ方向の分布と、その場所の 材質や密度も同時に示すべきでしょう。) この図をみるとどれだけ被害範囲が大きいか もわかりますし、もっと低い線量まで調べる べきなこともわかると思います。 ニュースでしいたけ農家が放射能を下げるのが大変だという ことが報道されていましたが、この図をみたら その大変さがよくわかると思います。 なにしろイタリアでも今年もまだチェルノブイリ起因の 放射能で出荷停止となっているのです。 これからどこまで事故対応する必要がでてくるのか 気が遠くなります。東電は 事故前よりも少しでも線量が高い農産物は 事故前の価格で買い取るべきでしょう。 (むしろ積極的にきのこをつかって 放射性物質を回収してもいいかもしれません。)

ちなみに、全体のリスクを考える 数学的な方法の記述があればさらに実用的な 特集になったことでしょう。 リスクを計算するための前提となる考えかたが成り立たない リスクが考慮されていないのがおそろしい ことです。たとえば少しの放射能は 健康にいいなどと主張されている方がいますが、 それは、上記のような修復できない人を無視した議論 ですし、放射能の害はべつにガンだけではありません。 ガンになるよりはるかに多くの細胞が死んでいきます。 それで体に影響がでないわけがありません。 (原発のストレステストでも、地震や津波を予測する 理論の精度がまるで考慮されていません。 どちらも3倍以上もの大きなものがきたことが あります。当然それに余裕をもって6倍以上 の余裕がなければならないとすべきなのに、 1倍ちょっとで保安院は許可しようと しているようです。これではちょっと予測が ずれただけで第2第3の事故がおきることでしょう。 そもそも火山国の日本では世界最大の災害が どこにおきても大丈夫なように(つまり6倍程度の余裕がある状況で) つくらねばならないのです。それを世界各国が勧告しようともしません。 やはり原発を利用する能力は人間にはないようです。)

安全論者もおそらくわかっているのでしょう、 安全の説明には甲状腺がんなどについてはなどの 制限がさりげなく入っています。 問題はその他の多くの疾病が何十年後に どうなるかなのですが、それはわからないので 発言をさけています。 ところがそれを部外者が聞くと 完全に放射能の害がわかっていて その程度の被害しかでないと 思ってしまいます。 本来はマスコミがそういうミスリードを 正すべきなのですが 最近学界のひとにつっこみを いれることができないひとばかりのようで こまったことです。 今回のようなことは未曾有の惨事なので、 すべての人が経験していない素人なのです。 専門家恐怖症を克服して もっと活発な議論を行うべきでしょう。

では、また来月に。

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