今月の本   0908号 日本人の英語 (岩波新書) マーク ピーターセン (著)




今回の本は、日本人の英語の問題点について、 楽しく紹介している本です。

この方のすごいところは、母国語である米国語だけでなく、 日本語の語感を完璧に獲得されているところです。 ですから、説明が日本人に非常にわかりやすいものになっています。

そもそも、新書は専門家が書くものなので、 読みにくいものが多いいのですが、 この本はこれまで読んだ新書の中で、もっとも 読みやすいものでした。

こういう方に、翻訳をしてほしいものです。 私のような英語力がないものでも おかしいと思う翻訳にであうことはありますし、 日本文学として翻訳本であることを意識せずに楽しめる翻訳本がほとんど ありません。どちらかというと、受験で 習った英語の言い回しをそのまま訳されるような 翻訳調のものが多くて、翻訳物のとっつきにくさ を増しています。 この方ような両方の語感を認識できる方に 翻訳作業をしてほしいものです。 そうなれば、おもしろい外国文学を 日本語で楽しめるでしょうし、 日本のおもしろい小説や漫画、映像作品 などを、海外の方も直接楽しむことが できることでしょう。 前にも書きましたが、芭蕉の句などは ちゃんと海外で紹介されているのか、甚だ不安です。 というのも、源氏物語の現代語訳などをみていると、 日本人であっても和歌を現代詩として再構築することに成功している 人は見受けられないからです。たいがい単に意味を説明している だけです。おそらく金子みすずほどの才能があれば、 ほぼ同じ詩覚及び品をもった現代散文詩をつくりだせるでしょうが、 凡人には難しいのでしょう。これは翻訳小説でも同じで、 一流の作品であればあらすじだけでもおもしろいので、楽しめることは 楽しめるのですが、 原著には本来その小説の品や感覚が備わってして、 さらに話のすじに彩りをそえて数倍おもしろくなっているはずなのです。 文学作品を翻訳する人には、 語学能力だけでなく作者と同じレベルの創作能力が 必要だということが、翻訳業界ではあまり認識されて いないことが残念です。

この方は大学の先生をしているようですので、 是非先生と同じレベルの人だけ卒業できる 翻訳科をつくってほしいものです。 そうすれば、そこを卒業された方に翻訳をまかせれば、 文学的な調子まで含めて翻訳してもらえますから、 より海外とのコミュニケーションが進むことでしょう。 これが無理なら、日本語関連の翻訳家の格付けを つけてほしいものです。そうすれば、文学的で 娯楽的なものほど格付けが上の人に頼めばいいという ことになり、翻訳による障害が少なくなることでしょう。

では、また来月に。



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